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守護霊〜一人称について

守護霊〜霧に立つ影〜(ショートショート

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『守護霊〜霧に立つ影〜』は、400字詰め原稿用紙(20字×20行)換算で7枚余りのショートショート。この作品のヒントとなったのは、あるとき小耳に挟んだ体験談だった。戦時中、大きなダメージを受けた飛行機のパイロットが帰還中、絶体絶命という状態の中で、戦死した戦友の幻影を見たというのだ。なんとか生還をはたすことができたパイロットは「あれは、戦友の霊が自分を守ってくれたのだろう」と考えたそうな。このドラマチックな体験談を聞きながら、この話に全く別の解釈を持ち込むことができるのではないか──と考えたことが『守護霊〜霧に立つ影〜』のヒントになった。ある現象が、見方(解釈)によって全く違った色合いに転じる──そんな意外性を意図して描いた小品だった。

小説の一人称について
『守護霊〜霧に立つ影〜』は、作中の「私」同様、僕がワープロ──その後パソコンの普及で絶滅した(?)日本語ワードプロセッサ専用機──を愛用していた時代に書いた(タイプした)作品。一人称で描いた作品だが、もちろん作中の「私」は僕のことではない。
小説では、しばしば一人称が使われる。一人称で作品を書くメリットは──まず、主人公が誰なのかが明確であること。映画やテレビドラマ等の映像作品では視覚的に役を識別しやすいが、小説では名前という記号だけで人物を識別しなくてはならないので、登場人物が増えると覚えにくかったり混乱をきたしやすい。これがときに読み手のフラストレーションになったりもするが、主人公を一人称にしておけば、他の登場人物と間違えること無いし、作中で覚えなくてはならない人物名を一人分節約できる。ちなみに僕の場合、登場人物を覚えやすくするために、名前の表記をカタカナ・ひらがな・漢字などで使い分けたり、字数を変えるなどして差別化をはかることも多い。
他に一人称のメリットとしては、読者が(あるいは書いている作者自身が?)主人公と一体化することで共感しやすくなる──というような効果もあるかもしれない。
また、一人称で書き始めると、作中の事件を特定の1人の視点で描かなくてはならなくなるため、この「制約」によって、描くべきエピソードをどのような場面で構成すれば手際よく描けるか、整理する必要に迫られる。その結果、読み手からするとわかりやすく、書き手は「事件やエピソードをわかりやすくまとめる構成力」が身につくというメリットも考えられる。
しかし一方、一人称ばかりを好んで書く人は「制約」によって、発想が「一人称で描けるもの」に偏向し、こぢんまりとまとめるクセがついて、これが物語の広がりを抑制する傾向があると危惧する向きもある。
創作修行を続ける者が、好んで描くスタイルに合わせた創作スタイルを確立していく(条件による最適化?)というのは大いにあり得ることだ。一人称もの(?)ばかり書いていると、「発想も一人称で描ける範囲のものになってくる」という危惧は、わからないでもない。
他の例でいうと……「短い作品ばかり描いていると発想や構成もそれにあったものに固まっていく」とか、「枚数や作品の生産量にノルマを課して描いている人は、枚数をかせぐ書き方や、短期間に作品を仕上げるための技法(クセ)が確立してくる」などといったことはありがちな気がする。書き手は、苦労しているのだから、それだけ修行している気になるのかもしれないが、単に「課せられた制約の中でも書ける技術」がつくだけで、面白い作品を書く修行にはなっていなかったり、かえって遠ざかっていると感じるケースも思い当たらないではない。執筆ノルマを優先することで「作品が雑になることに鈍感」になったり「低いハードルでも書ける」ようになっていく例は少なからずあるように思う。
話を一人称に戻して……僕は一人称をよく使うが、その是非は作品によって──その作品にふさわしいか否か──ということなのだろうと考えている。メリット・デメリットを理解した上で、描こうとする作品にふさわしい人称を選択すればよい。
『守護霊〜霧に立つ影〜』では、最後に死を目前にする主人公の衝撃をより効果的に演出するために一人称を選んだ。三人称で描くより「私」のモノローグで展開した方がしっくりくるという判断もある。
小説の中で使われる人称は、作品によってふさわしい形が選ばれているだけにすぎず、一人称で描かれているからといって、作中の人物が作者というわけではない。

 

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