地球のタネ(ショートショート)
『地球のタネ』は400字詰め原稿用紙(20字×20行)換算で14枚余り。
《環境破壊を続ける人類は地球にとってのガン細胞》というようなことが言われるようになったのはいつ頃だったろうか? この見解は当初衝撃的でもあり、「言われてみれば確かに」感があって説得力もあった。この「意外性(しかも判りやすい)」をオチに利用したのが、ひとつ前の『神への陳情』ということになる。しかし、《環境破壊を続ける人類は地球にとってのガン細胞》という概念はすでに一般に浸透し、目新しいものではない……。意外性としては新鮮味に欠けるので、これだけではアイディア・ストーリーとしては、どうも弱い……。
そこで《環境破壊を続ける人類は地球にとってのガン細胞》という周知の概念を、もうひとひねりして逆転させるアイディアを得て描いたのが『地球のタネ』ということになる。この作品は当初『宇宙観』というタイトルで個人紙《チャンネルF☆通信》13号(1995年11月25日号)に載せたものが原型となっている。『宇宙観』に登場するのはごく普通の男女で、テラフォーム(火星の地球化計画)は、登場人物たちの会話の中にでてくる──という扱いだった。これを実際に火星の向かう移住者の視点で描き直したのが『地球のタネ』。テラフォーミングなどという言葉は出てくるが、ハードなSFではなく、宇宙空間に浮かぶ宇宙船を舞台とするSFメルヘン的なイメージで描いた作品だった。